先入観

先入観。

岩波書店の広辞苑第5版で調べると、『初めに知ったことによって作り上げられた固定的な観念や見解。それが自由な思 考を妨げる場合に言う。先入見。先入主。』と書かれている。
人間は、意外とこの先入観にとらわれていることが多いのは、いまさら言うまでもないかと思う。今回は、ゲーム『制作』とは 直接的な関係は無いが、この先入観について考えてみよう。


初めて、人に会ったとする。その時、人はほとんどの場合無意識に、相手に対して何がしかの先入観を持つ。その人のし ぐさ、服装、しゃべり方、表情、そして顔。

人は得てしてそれらの情報から「この人は〜〜な人」と言う人物像を作り上げてしまい、後々までその印象を持ち続ける。だ からこそ、意外な一面を見たときに驚いたり、初めの印象とは違うことで幻滅したり、その逆に付き合ううちに好印象を持っ たりする。
だが、ここでは対人関係における先入観ではなく、ゲームにおける先入観を論じよう。

ゲームにおける先入観とは何か? まず、オープニング。
ゲーム制作において、執拗に『オープニングが命』と言われる所以がここにある。『オープニングで失敗してる作品は大抵 最後まで失敗している』という有名な格言もあるほどだ。なるほど、確かにオープニングに失敗した作品は、こう言っては何 だが、全体のクオリティが低いものは多い。しかし、ここには先入観が関与しているのは言うまでも無い。

オープニングで面白くない、だから、全体も面白くないだろう、という先入観を持ってしまっているのだ。
逆に言えば、多少暴論ではあるが、オープニングで惹きつければ、ある程度作品全体のレベルが低くても最後までやり通 してもらえる、と言うことになる。


そして、先入観は何もオープニングだけで与えられるものではない。むしろ、真に先入観が重要となるのは、ゲームをプレ イしてもらう前、ゲームの紹介文を書く段階である。

実際に遊べば面白い作品も、紹介の段階で躓いてはそもそも遊んでもらうことができない。逆に、好印象を与えるような紹 介文を書けば、人は進んでそのゲームをやるだろうし、先入観の分だけ好印象も持つだろう。

ここで重要なのは、だらだらと文を書くことではない。自分のゲームがいかに素晴らしいシステムを搭載し、こんな見所があ る、と言ったところで、そのゲームが面白いかどうか判断することはできない。重要となるのは、遊び手の想像力を働かせて あげることである。
短い文章から、「こんなゲームかな?」という想像をもたせてやり、その想像を好意的な方向に持っていくような文章を書け ば、先入観でのつかみはまず間違いなく成功していると言ってよい。

たとえば、エロゲーのOPムービー。いい加減こういう例を挙げるのは自分がダメ人間であることを公表しているようなので 嫌になってきたのだが、例として適当だと考えるので載せさせてもらう。
さて、このOPムービー、宣伝用に公開されるのが常なのだが、意外とコレが想像力を働かさせてくれる。文章こそほとんど 登場しないが、動画と言う視覚的情報、そして、ボーカル曲という聴覚による情報、この二つは、ゲームにおける主要な情 報伝達媒体である。コレをフル活用し、キャラ紹介やあらすじの『断片』を伝えられるほか、ゲーム中で使われているCGを 表示することも可能にする。
作品性やストーリー性が重要視されるようになってきたエロゲーであるが、初期の販売に貢献するのはやはりイラストであ る。常々「客をつかむのは絵。名を残すのはシナリオ」と私は考えている。ゆえに、このOPムービーと言うのは「客をつか む」部分に非常に貢献していると考えている。
『OPムービー見てたらなんとなく買いたくなった』と思わせれば、大成功である。


もうひとつ、口コミというのがある。まぁ、ネット上が主たる情報交換の場であるだろうから『口』コミと読んでいいのかは謎だ が、コレがゲーム自体の存在を広めると同時に、好意的な先入観を与えることにも役にたっている。つまり、『みんなが面白 いと言うのだから面白いのだろう』と言うことだ。
コレばかりは、作者がどうこうできるものではなく、とにかく大衆受けするゲームを作る以外道は無いのだが、フリーゲーム を作っている身としては『自分が面白ければいい』という部分が多くあるので、あまり深く意識することは無いであろうと思う。


最後に、自分で言うのも色々アレだが、うまくできたと思っているので紹介させてもらう。『100パーセントふりげストア』さん (リンクから行けます)に紹介させていただいている私のゲーム『UPRISING完全版』の紹介文だ。
『ツクール2000製の本格派SLG。帝国に平穏を奪われ、復讐を誓った少女を待ち受ける数奇な運命の数々。戦いの果て に少女の見るものとは……』
と、コレだけだ。これに、タイトル画面を合わせて表示しているだけである。
にもかかわらず、7月8日の時点で既に1002ヒット。いや、正直自分でありえないと思った。

ベクターのDL数の通知から判断して、実DL数はさほど増えていないようだが、それでも、アレだけの文章でこの人数を引 き付けられていると言うのは、それなりに紹介文として成功している証拠であろう。
実際に、この文章を書いた時は次の2点『だらだらと書かない』『想像力を刺激する』を意識していた。


最初にゲーム『制作』とは直接関係無い、と私は書いた。だが、作ることそのものとは無関係でも、ゲーム全体で見れば制 作の一部分だ。ちなみに、こういうキャッチフレーズや宣伝用の文句を考えるのは得てしてシナリオライターらしい。
一人でゲームを作っている方、シナリオライターをしている方。
面白いお話を考えるのも良いが、こういう方面に目を向けてみるのも、また面白いかもしれない。



というわけで、今回も色々と書かせていただきました。
宣伝のこととかを考えると、作った後まで面倒見てやらにゃならんのは、HPもゲームも一緒ですな。
このコラム、意外と友人らの反応を見ると好評(?)らしくて、書いていてうれしい限りです。
さて、次は何をやりましょうか……?

2004年7月 ハムスターズ
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