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神鏡、水銀党、霧式の3人によるマルチ創作サイト

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ゲーム制作講座lecture


キャラクターの作り方 〜その主人公、物語に必要ですか?〜
ステップ6:各論

「ここまでいろいろ考えてきたけど、他に気をつけたほうがいいことってある?」
「そうだな、世間でよく言われている内容も踏まえて、いくつか書いてみよう」

・各論1)感情移入できるキャラの作り方
「ねぇ、ハムちゃん。よく、魅力的なキャラクターとして『感情移入できるキャラクター』が挙げられるけど、それについてはどう思う?」
「難しいな。というのも、感情移入にはプレイヤー・読み手の主観が入ると思っているからだ。たとえば、『-新説-UPRISING』の主人公リディアには、『すごく共感できる!』って言う人と『全く共感できない』って言う人がいた。まぁ、このキャラクターは割と両極端に評価が分かれたキャラクターではあるけど、こういうケースがあるのを見ると、万人が感情移入できるキャラクターを作ることの難しさは感じてもらえると思う」
「う〜ん、そうすると、どうすればいいんだろう?」
「ひとつの考えとしては、『自分と似た境遇・性格・立場』のキャラクターには感情移入しやすい、というものがある。たとえば、主たるターゲットとして考えているプレイヤー・読者が高校生なら主人公を高校生にする、というような考え方だ。これは、若年層をターゲットとした少年誌系のマンガやライトノベルにおいて年齢の若い主人公が圧倒的に多いことを見ても、有効な考え方なのだと考えることができる」
「なるほど……それは一理あると思うけど、ファンタジーの、たとえば魔法使いが主人公とかだったらどうするの? 現実には、魔法使いの人はいないよ?」
「そういう場合でも、考え方や立場が同じならいいと思う。例えば、『病気になった恋人を助けたい』というのは万人に共通する感情だろう。また、成功体験をする(大事件を解決する、とか)、失った誇りや絆を取り戻す、お金持ちになる、異性にモテるようになる、など、自分の願望や理想、希望を体現してくれるキャラクターは見ていて気持ちのいいものだ。これも、感情移入の一つと考えられるだろう」
「映画……特に、アクション映画なんかは、そういうのが多いかもね」
「そうだな。たとえば映画で、離婚問題を抱える主人公が物語を通じて奥さんとの絆を取り戻す、というパターンが多いのは、社会背景や願望の反映と考えることもできるだろう」
「たまにゲームで見るけど、主人公が喋らないとか、主人公のグラフィック自体も無くて完全に主人公主観で進むような場合は? これも、感情移入?」
「それはゲーム特有の方法だな。『0人称』なんて言い方をする場合もあるようだ。つまり、主人公を徹底的に没個性化したり、喋らなくしたりすることによって、プレイヤーの視点と主人公の視点を完全に一体化しようとする手法だ。ゲームは、他のメディアと違って受け手(プレイヤー)が受動的に内容を受け取るだけではなくて、キャラクターを操作して移動したり戦ったりと、能動的に介入できる。だから可能なのだと思う」
「でも、ダンジョン探索ゲームとかならまだしも、主人公が全く喋らなかったら複雑なストーリーを作るのは難しくない?」
「そうでもないだろう。主人公が全く喋らなくても素晴らしいRPGはある。『クロノトリガー』(スクウェア・エニックス)とか、その代表だろうな」

・各論2)キャラクターには欠点が必要?
「ねぇ、ハムちゃん。キャラクターには欠点があった方が人間味が出ていい、みたいな話、時々聞くけど、やっぱり欠点って必要なのかな?」
「そうだな。確かに、何がしかの欠点を持っていることは大事と言われている。と言っても、別に人間味が出るから欠点を作るわけじゃないと俺は思ってる。単に、完璧超人の主人公だとお話が面白くないんだな。また、さっき『自分と似た境遇・性格・立場のキャラクターには感情移入しやすい』と書いたが、そういう点から考えると、完璧超人の主人公だと感情移入しにくいのかもしれない。欠点の無い人間は、現実にはいないからな」
「たしかに……イケメンで、頭が良くて、すごく強くて、悩みもなくて、女の子にモテモテな主人公だと、あっという間に敵を倒しちゃってお話にならなさそうだし、あんまり共感できなさそう。完璧超人の主人公が簡単に勝っちゃうお話より、弱い主人公が努力とか機転で強敵に勝つお話の方が面白そうだな」
「そういうことだ。完璧超人の主人公だとドラマや葛藤が生まれにくいんだな。主人公の成長を描きにくいというのもあるかもしれない。主人公が欠点や弱点、悩みや問題を抱えていることで、その主人公と連動したストーリーが作れるようになる。だから例えば、イケメンで、頭が良くて、すごく強くて、悩みもなくて、女の子にモテモテでも、受け手が共感できるような悩みや秘密を抱えていれば主人公になりうるだろう」
「う〜ん、なんか欠点っていうより、文字通り『欠けた部分』が必要な感じがするね」
「いいところに気づいたな。そう、<『欠けた部分』を『埋める』>という構図は、およそあらゆる物語・ストーリーに共通するモチーフだ」

 たとえば、奪われたものを取り戻す、無くしたものを見つける、不足していたものが埋まる、など枚挙にいとまがありません。さらわれたお姫様を救いに行く、家族と仲直りして絆を取り戻す、盗まれた宝を取り戻しに行く、などなど……それを、主人公自身の問題に置き換えれば、『欠けた部分のある主人公』になるわけです(たとえば、孤独な主人公が肉親との絆を取り戻す、など)。

「最初に“人間味”という言葉が出てきたが、もちろんキャラクターに人間味を感じさせる上でも欠点というのは重要だ。たとえば、ロボットのキャラクターが登場する。ロボットだから無表情だし、感情は一切示さない(これが欠点)。しかし、このロボットがクライマックスで『あなたに会えて良かった』と言って敵と自爆したら、読み手はこのロボットに人間味を感じてくれるだろう」
「ふぅむ、これを例えば『感情をなくしたヒロイン』みたいにしたら、それだけで『ヒロインの感情を取り戻す』ってストーリーができちゃいそうだし、最後のシーンでヒロインが笑顔になったりしたら、ヒロインに人間味を感じられそうだね」
「そのとおり。これを非常に象徴的に描いている作品に『ぼくを探しに』(作:シルヴァスタイン 訳:倉橋由美子 講談社)という絵本がある。とても良い本だから、興味のある人はぜひ読んでみよう」

各論3)秘められた力のあるキャラクター
「ねぇ、ハムちゃん。何か特別な力とか秘密があって、最後のクライマックスでその力を使って逆転する、みたいなキャラクターって結構多いけど、そういうのはどうかな?」
「いいと思うぞ。主人公やヒロインに多いな、そういうキャラクターは。ただ、一度使っちゃうとプレイヤーや読者にバレてしまうから、短編や一話完結の作品みたいな比較的短めの作品の方がやりやすいと思う。連載作品で、毎回クライマックスに主人公の決め台詞と共に逆転のカタルシス! なんてのも、とても面白そうだ。ただ、長編ゲームだと最後の最後まで伏線を張りつつ隠し抜くってことになるから、結構大変かな」
「こういうキャラクターを作る場合、どうすればいいかな?」
「やはり、ストーリーと連動して作ることだろう。むしろ、ストーリーのクライマックスで逆転するわけだから、ストーリー抜きでキャラクターを作ることは出来ないと言ってもいいかもしれない」

各論4)ギャップ萌えのキャラクター
「よく、意外な一面があるとキャラクターが魅力的に見える、みたいなことを聞くけど、やっぱり意外な一面ってあったほうがいいかな?」
「いわゆるギャップ萌え、というやつだな。無理に作る必要はないと思うが、意外な一面があると魅力的に見えるのは事実だな。これは、なにもキャラクターに限らず、実際にもよくあることだ」
「たとえば?」
「はじめは暗い人だと思ってたけど、話してみると面白い、とか。大柄で無骨な人だと思っていたら、細やかな配慮のできる人だった、とか。つまり、はじめの印象が良い意味で覆されると、魅力が増して見えるということだと思う」
「キャラクターとして作るなら、どうすればいいかな?」
「これも、やはり連想ゲームだと思う。普通に連想して出てくることとは違うこと、逆なことを作ることで、ギャップのあるキャラクターにできると考える。定番なところでは、不良だと思っていたら雨の中で捨て猫を拾っていた、とか」
「たしかに、不良って言葉から連想する行動とは違うよね。悪いイメージが良いイメージに変わるっていうか」
「そう。原則として、マイナスの印象をプラスにひっくり返す形で行うのが良いだろう。完璧超人だと思っていたら意外な弱点があった、みたいな、ちょっとした欠点を見せることでも魅力的なキャラクターとなるかもしれない」
「見た目のギャップとかは? 小さな女の子が、ゴツイ大剣振り回してモンスターやっつけるとか」
「それも、連想ゲームの応用だな。大剣を振り回す、というと屈強な大男をイメージするが、その逆の小さい女の子が大剣を振り回すことでギャップ萌えとなるのだと思う。意外なこと、不釣合なこと、相反すること、などが一つのキャラクターの中でうまく同居すると魅力的に見えるんじゃないかな」

・各論5)システムと連動したキャラクターの設定
「ここまで述べてきたのは、シナリオと連動したキャラクターの作り方だ。だが、ゲームにおいては戦闘や特殊能力など、システムと連動したキャラクターの設定を作ることも可能だと思う」
「たとえば……魔剣を手に入れたから主人公だけ魔法が使える、とか?」
「そうそう、そんな感じ。ここでさらにもう一歩踏み込んで、ストーリー・キャラクター・システムが一体となったものを作ることができると、なお良いと思う」

例)主人公は先代魔王の跡を継ぐ魔王候補の一人
 ⇒主人公を倒すために冒険者や勇者、ライバルの魔王候補がやってくる
   ⇒システム:タワーディフェンス系のゲームや経営SLG
   ⇒ストーリー:ライバルを倒し、新しい魔王として即位する

「こんな感じで、ストーリー・キャラクター・システムの全てを『連想ゲーム』で作ると、ゲームとしてまとまりのある内容になるんじゃないかと思う」
「たしかに、システムまで踏み込んでデザインするのは、ゲームに特有かも……ここまで来ると、キャラクター作りっていうよりゲームデザインに近い感じがするね」
「そう言えるかもしれない。他にも、ゲームでは戦闘で強いキャラクターに人気が出る傾向がある。普通のRPGであっても、強いとか役に立つとか、戦闘やシステム面で他のキャラクターと差別化できると、キャラクターの魅力につながると思う」