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神鏡、水銀党、霧式の3人によるマルチ創作サイト

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ゲーム制作講座lecture


意外な展開 〜えー!? そんなの予想済み?〜

「ハムちゃん、ハムちゃん! 私、アイドルグループを結成しようと思うの!」
「ほう、すごいじゃないか。なんて名前のグループにするんだ?」
「流行に乗っかって、“HAM48”にしようと思うの!」
「うん、まぁ、なんとなくそんな気はしたけど……」
「ネットを中心に活動して、コンセプトは“自室で会えるアイドル”! ライブチャットやユーチューブで活動するのよ!」
「そりゃすごい。やっぱり可愛い服着て歌ったり踊ったりするのか?」
「ちっちっち、甘いわね。槍振り回して、歌って踊れるアイドル! これよ!」
「うん、まぁ、お前らしいな」
「えー!? 意外性を感じない!?」

 意外な展開のシナリオ、というのはなかなか賛否の分かれる物のようです。意外な展開が無いと面白くない、と言う人もいれば、意外な展開が無くてもしっかり王道やっていればよい、と言う人もいます。まぁ、その是非はともかくとしても、意外な展開が物語を盛り上げるために大きな効果を持っているのは事実です。今回はそんなお話です。

「ぶっちゃけ、ハムちゃんって意外な展開やる?」
「起承転結の“転”でひっくり返すぐらいならよくやるぞ。本当に大きなどんでん返しはたまにしかやらないな。俺は99まで正攻法で攻めて、最後の1で奇策を使うやり方が好き。『-新説-UPRISING』のラストなんかそんな感じかな。が、これは個人の好みだし、これに限らず使う事も少なくない。意外な展開からスタートして一気にお話に引き込むやり方もあるし、中盤にどんでん返しを持ってきて後半で回収しつつ盛り上げる、というやり方もある。だが、使い方を誤ると残念な結果に終わるから、そこは注意したいな」
「うーん、使いどころは難しいのね」
「気をつけて使えば、非常に効果的だよ。まずは意外な展開とは何か考えて、次にどんな効果が期待できるのか記してみよう」

・意外な展開とは?
「ずばり、当然予想されうるお話の流れから逸脱する展開
「たとえば、どんな話?」

起 王様から魔王退治を依頼される。
承 魔王を倒すために旅をする。
転 ついに魔王と決戦。

「さて、結に予想される展開とはどんな展開だろう?」
「うーんと、魔王を倒してハッピーエンド、じゃない?」
「じゃあ、こうしよう」

結:魔王に敗れ、身体を乗っ取られて帰国。魔王@勇者の肉体によって国が滅びる。

「うわっ、なにこの展開!?」
「意外な展開だろう。ようは、予想される展開と逆、あるいはまったく異なる展開にするのが意外な展開、ということだ。お話の流れを変える展開と言ってもいい。こういう意外な展開には、次のようなメリットがある」

意外な展開のメリット
1)お話の予想がつかなくなるため、お話に引き込む事が出来る
2)単調なお話になるのを防ぎ、メリハリをつけられる
3)オチのどんでん返しで成功すると、それだけで印象に残るような感動を与えられる

「(1)の良い点は、『この後どうなるんだろう?』『結末が予想できない……最後まで見てみたい!』とプレイヤーさんに思ってもらえることだ。こうして引きつけられると、最後まで遊んでもらえる。『-新説-UPRISING』は、割と後半部分(全編か?)はこの展開を使ってる。個別のシーンもそうだけど、『皇帝を倒す戦い⇒いかにして民主化革命を起こすか』という戦いの質の変化に伴って、『どうやってこのお話、まとめあげて着陸させるんだろう?』と思ってくれた人は多かったようだ。『皇帝と戦う=皇帝を倒す』という予想される展開から逸脱していたわけだな」
「(2)は分かりやすいね。単調なシーンばっかりだと飽きちゃうもん」
「ちょっと変化をつけるだけでもいい。たとえば、毎日家と学校を往復してるんだけど、ある日だけ違う展開が待っている、というだけでも意外な展開と言えそうだ。他にも、『絶対登場人物を殺さない』という作風でやってきたのに、『ある人物だけ死亡する』というのも意外な展開だな。予想されうる『誰も死なない』という展開から逸脱するからだ」
「(3)もよく見るね。これをうまくやってる作品は、たしかに印象に残るなぁ〜」
「長編のゲームだと難しいんだけどね。ずっと遊んできて、最後は主人公に幸せになって欲しいと思う人も多いから、王道的展開の方が受け入れられやすい、というのは一つの傾向として否定できない。映画だと『シックス・センス』は面白かったな。あと、推理物で意外な人物が犯人だったりするのもこれだと思う」

・意外な展開の落とし穴
「でもさ、ハムちゃん。さっき例で挙げた魔王に負けて〜っていう展開は、バッドエンドにしか見えないよ。なんか、イマイチ納得できない
「そうだろう、そこに意外な展開の落とし穴がある。これを見落としてハマると、意外な展開はかえって逆効果になる」

 意外な展開は、予想される展開を裏切るだけに、それを見る人が納得してくれない場合があります。また多用しすぎるとお話そのものがぐしゃぐしゃになり、ワケの分からない物になってしまう恐れもあります。
(1)不満を抱かせる意外な展開
 たとえば、主人公が勝つと思ってたのに絶対勝てない戦闘になる、助けるためにアイテムを取って来たのに結局助けられない、など、プラスの結果を予想していたのにマイナスの結果に終わる場合、不満を抱かれてしまうケースは少なくありません。現実にはこんな事はよくある事ですが、やはりそこは作品・ゲームであるため、期待をかなえる展開というのはある程度求められるようです。

(2)意外な展開をたたみかけすぎる
 意外な展開に次ぐ意外な展開、というのは迫力がありますし、お話にものすごい勢いをつける事が出来ます。物語全体の“転”部分で用いれば、驚くほど効果的でしょう。反面、意外な展開=予想を裏切る展開が連続するため、だんだんお話が分からなくなってきたり、見る人が疲れてしまったりする場合があります。また皮肉な事に、意外な展開も多用しすぎると意外な展開とは思えなくなってきます(あ、またどんでん返しか、と思われてしまいます)。

・意外な展開の使い方
「うーん、ハムちゃん、それは分かったけど、実際どんな風に使うといいのかな? いざシナリオを書こうとすると、意外な展開って結構難しいよ」
「まぁ、そうだろう。俺もよくやるパターンをいくつか紹介しようか」

1)起承転結の“転”に持ってくる
 もっとも意外な展開を使いやすいのは(これこそ意外に思われるかもしれませんが)、お話の最後ではなく、起承転結の“転”です。お話が急展開を迎える場面だけに、意外な方向にお話を持っていく事がやりやすいのです。ただ、ある意味“お約束”ともいえますので、無意識にやっている人も多いと思います。
「たとえば、どんなのがあるかな?」
「敵の攻撃を受けてピンチになった時に、逃げたと思った仲間が帰ってきて助けてくれる、とかかな。一見お約束に見えるけど、よく見ると『戦って勝つ』という基本の流れ(プラス)に『敵の攻撃を受けてピンチ』という展開(マイナス)が加わったシナリオに、さらに『逃げたはずの仲間が助けにくる』という展開(プラス)が加わって、都合2回ほどお話の流れを変えている事になる。『スターウォーズ・エピソード4』の最後のハン・ソロとかカッコ良かったべ?」
「たしかに、単純に勝っちゃうより、こっちの方が面白いね」

2)最後のどんでん返しに持ってくる
 お話の結末に持ってくるやり方で、これもオーソドックスなやり方です。最後に『実は〜〜だったんです』という形ですね。これを成功させるためには、作品中(えてして全体)に幾重にも伏線を張っておく必要があります(伏線について詳しくは別の回で)。逆に伏線をろくに張らずにどんでん返しをすると「なんで?」とか「ご都合主義」とか言われることになるので注意が必要です。
「これをうまくやったら、それだけで作品として成功だと思う。でも、難しいから挑戦する時は気をつけてな」

3)最後じゃないけど、どんでん返しに持ってくる
 『実は〜〜だった』を作品の最後ではなく、別の所で使うタイプです。『実は生き別れた妹だった』『実は魔王が世界を守っていた』などでしょうか。最後に使うものより規模は大きくありませんが、その分使い勝手はよくなります。起承転結の“転”に使う物と似ていますが、どんでん返しをする時は事前にある程度伏線を張っておくことが必要です。
「『実は妹だった』なら名前が似ている、出身地が同じなど。『実は魔王が世界を守っていた』なら魔王らしくない行動を出す、思わせぶりなシーンが出てくる、といった感じかな。いずれにせよ、伏線が必要な点は重要だ」

4)次につながる伏線として持ってくる
 次につながる伏線にするために、あえて予想を裏切る展開にするパターンです。『ライバルと戦闘するも敗北⇒再戦の時には勝利』、といったタイプです。このパターンの良いところは、プラスからマイナスにひっくり返す展開を作る事が出来る事です。たとえば、『ライバルと戦闘して敗北』だけでは、ただ負けただけで終わってしまいます。これでは不満に思われてしまう恐れがありますが、その後『再戦して勝利する』ならば、もう一度ひっくり返してプラスに持ってくる事が出来ます。これなら、プレイヤーの期待を裏切ることなく、プラスからマイナスに転じる展開を作る事が出来ます。
 もちろん、『再戦すれば勝つんでしょ?』という当然予想されうる展開を裏切る意外な展開という使い方も考えられますが、勝利(プラス)の逆は敗北(マイナス)なので、この場合使いどころは難しいでしょう。もっとも、引き分けなど別の方向へ持っていく手も無いわけではありませんが……
 ほかに、『助かると思ったキャラが助からなかった⇒後に同じシチュエーションになった時、今度はそのキャラが助かる』『主人公が戦いを前に敵前逃亡⇒二度目の時は逃げずに戦う』なども考えられます。
「こうして見ると、『最初は失敗⇒教訓を生かして二度目は成功』っていう形にも見えるね」
「そうだろう。実は一度マイナスに振っておいてプラスに振り戻すというやり方は、お話作りのテクニックの一つだ。これについては、別の回で改めて扱おう。伏線についても、別の回で扱いたいと思っているが、一言だけ言うと伏線とは『ひっぱり力』だと思う」
「ひっぱり力?」
「弓を引くように、あるいは輪ゴムを思い切りひっぱるように、お話をひっぱっておくことによって大きく動かせるようにする力だ。輪ゴムは思い切り引っ張っておいた方が遠くまで飛ぶだろ? 同じ事で、物語も伏線を張る事で引っ張っておくと大きく動かす事が出来る。その分、遊んだ人の感動も大きいだろう。謎の人物しかり、思わせぶりなセリフしかり、一見そうと分からないさりげない伏線しかり(明らかになった時に威力を発揮する)、まぁ、この辺についてはまた今度やろう」
「むぅ……伏線を張っておく気ね」
「うむ、続きが気になるだろう? これがひっぱり力と言う物だ」

5)物語全体を逸脱させるために持ってくる
 最後に紹介するのは難しい使い方です。それは物語全体を予想される方向から逸脱させるやり方です。王道のお話を、途中から王道で無くするようなやり方と言えます。
 『-新説-UPRISING』では挑戦しています。あのストーリーは、当初『皇帝を倒す』事を目的としていながら、次第に目的が『帝政国家を民主主義国家に変える』という形に変化していきます。すると、皇帝を倒しただけでは民主主義国家に出来ない……という話になり、どうすればいいか? を考え、実現しようとする展開へとつながっていきます。どうやってまとめるのか? どんな結末になるのか? と分からなくなったプレイヤーさんは多かったようです。このように、物語全体を逸脱させると、最後までその展開から目を離せなくなるでしょう(『-新説-UPRISING』が成功していたかどうかは別として)。
 ただし、注意があります。王道と言える物語の流れを逸れて、まったく違う道に進んでいくわけですから、破たんする恐れは当然付きまといます。これをやる時は、最後までしっかりお話を作った上でやるのがとても重要と言えるでしょう(『-新説-UPRISING』も最後まで作ってありました。そのうえで脱線する事もあったのですが、これはまた別の回で)。
「難しいが、いくつか考えてみようか。これに成功すると、それだけで特徴あるストーリーと言えるものになるだろう」

1.勇者となって魔王を倒しに行くものの、実は世界を滅ぼそうしているのは魔王でなく邪神だと発覚。魔王と共同戦線を張り、人間・魔族連合を組んで邪神と戦う。
2.ヒロインと出会い、恋愛すると思わせてあっという間に結婚。しかし、結婚してから色々な問題が噴出、何度も離婚の危機を迎えながら奮闘する。

「たしかに、王道のお話と違って、どういう風にお話が進むか読みづらいね」
「あとは、王道的キャラクターをあえて意外な形に仕立て直すのも一つの手だな。『To Realize!』のガブリエルはそんなキャラクターだろう。明るくて元気だし、怪力だし火の精霊使うし、およそステレオタイプのエルフ像とはかけ離れた形にした。こういうキャラは、それだけでお話を動かす力を持っている。と、これもまた別の回かな」
「今日は伏線が多いわね……(汗」

・主人公が死ぬ展開
「最後にハムちゃん、主人公が死ぬお話ってどう思う?」
「どうって、別にいいと思うぞ。世の悲劇に名作はたくさんある。悲劇じゃないけど、大河ドラマだって、主人公最後に死んじゃうじゃん」
「そうじゃなくて、意外な展開として主人公が死ぬお話を作るのはありかな?」
「あぁ、そういう話ね……ありだと思うけど、ゲームだと使い方は限定されると思うぞ」

 主人公が死ぬ、というのは意外な展開の最たるものかもしれません。そのような展開に成功している名作も数多く存在します。しかし、ゲームシナリオで主人公を死なせる時は注意が必要です。それは、他のジャンルの作品と違い、ゲームの主人公はプレイヤーの分身・視点としての役割も担っているからです。

「小説や漫画なら、主人公が死んでしまって、その後他のキャラたちだけで進行するお話も可能だと思う。実際、そういうのあるし。映画は、さすがに2時間ぐらいしかないからやらないみたいだな、寡聞にして聞いた事が無い。ただ、ゲームは気をつけなければいけない」
「というと?」
主人公ってプレイヤーの分身なわけさ。つまり、自分で操作するし、基本的にプレイヤーの視点として動くだろう? 場合によっては、名前も顔グラフィックもなし、基本的に喋る事もなし、って場合もある。これは他のメディアには見られない特徴だ」
「言われてみれば、小説もドラマも、主人公が喋らないって事は無いね。主人公の視点がイコール読者・視聴者って、言われてみればあんまりないかも」
「だろ。他のキャラクターを操作する事や他のキャラクターの視点でお話が進む事もあるけど、あくまでサイドじゃん。メインは主人公の視点になる……その状態で主人公が死んだらどうなる?」
「うーん、プレイヤーが死んじゃう?」
「そういうと、ゲーム機の前で心臓発作でも起こしそうに聞こえるが……言わんとする所はその通りだ。主人公はプレイヤーの視点の役割を兼任しているため、ゲームの主人公を作中で死なせるのは困難だ。」
「もしやると、どうなっちゃう?」
「主人公=プレイヤー不在のゲームになる。ノベルゲームに徹して、主人公が作中のお話に関与しないならそれもありかもしれないが、まぁ普通はやらない方がいいだろう。成功している作品も無いわけではないんだが……例外だろうな」
「うーん……どうしても死なせたい場合はどうすればいい?」
「二つあると思う。一つは作中で生き返らせるパターン。主人公の死から一時的に仲間を操作して、仲間たちが主人公を生き返らせるとかな。主人公=プレイヤーが帰ってくるから、仲間の活躍をあくまで“サイド”に抑える事が出来る」
「もうひとつは?」
「物語の最後に死なせる方法だ。大河ドラマもそうだな。主人公の死と共に物語が終わるパターンだ。これは全く不思議な事ではない。主人公=プレイヤーであるから、主人公の死と共にお話が終わるのはごく自然な展開だ」
「なるほどー……意外な展開って、意外と奥が深いのね」

今日のまとめ
1)意外な展開とは「当然予想される展開から逸脱する展開」のこと。
2)意外な展開は上手く使えば効果的。しかし、落とし穴もあるので気をつける。
3)起承転結の“転”で使う事は多い。
4)どんでん返しをする時は、キチンと伏線を張っておく。
5)次につながる伏線のために、意外な展開を持ってくるのもあり。
6)ゲームで主人公を死なせる時は、使い方に気をつける。